カメラなしスマートグラスのEven Realities、評価額10億ドルに——美団・テンセント主導で約230億円調達

元Appleチームが手がけるスマートグラス企業「Even Realities」が、Meituan(美団)とTencent(テンセント)主導の資金調達で1億5,000万ドルを調達し、評価額10億ドルに到達したと報じられました。カメラを搭載しない“プライバシー重視型”スマートグラスという点は、日本市場にとっても注目すべきトレンドです。

カメラ非搭載のスマートグラスを開発する元AppleチームのEven Realitiesは、美団とテンセントから1億5,000万ドルを調達し、評価額は10億ドルに達した。

「カメラなし」がスマートグラス普及の鍵になる可能性

スマートグラスというと、AR表示やカメラ撮影、音声アシスタントとの連携を想像する人が多いでしょう。しかし、ウェアラブル端末が日常空間に入り込むほど、避けて通れないのがプライバシー問題です。

特に日本では、公共交通機関、職場、学校、商業施設などでの撮影に対する心理的ハードルが高く、カメラ付きデバイスには強い警戒感があります。過去にも、眼鏡型デバイスが「周囲を勝手に撮影しているのではないか」という不安から受け入れに苦戦した例があります。

その点で、Even Realitiesが「カメラ非搭載」を打ち出していることは重要です。撮影機能をあえて削ることで、通知、翻訳、ナビゲーション、テキスト表示、AIアシスタントとの連携といった用途に絞り込み、日常的に装着しやすいデバイスを目指していると考えられます。

中国ビッグテックの出資が示す「次のコンピューティング端末」争奪戦

今回の資金調達を主導したとされる美団とテンセントは、中国を代表する巨大テック企業です。美団はフードデリバリーや生活サービス、テンセントはSNS、ゲーム、決済、クラウドなど幅広いデジタル経済圏を持っています。

彼らがスマートグラス領域に関心を示す背景には、スマートフォンの次に来るインターフェースへの期待があります。スマートグラスは、スマホの画面を取り出すことなく、視界の中に必要な情報を表示できる端末です。将来的には、地図、決済、メッセージ、予約、買い物、AIエージェントといったサービスの入口になる可能性があります。

日本企業にもチャンスはあるのか

日本市場では、眼鏡そのものの品質、軽さ、デザイン性に対する要求が高く、JINSやZoffをはじめとするアイウェア企業、精密部品メーカー、ディスプレイ技術を持つ企業にとっても関連機会が広がる可能性があります。

一方で、スマートグラスはハードウェアだけで勝負が決まる製品ではありません。翻訳、AI、地図、決済、ヘルスケア、業務支援など、日常利用に直結するサービスとの統合が重要になります。日本企業が参入するなら、単なる「高機能な眼鏡」ではなく、通勤、観光、接客、医療、製造現場といった具体的な利用シーンに最適化した展開が鍵になるでしょう。

AI時代のスマートグラスは「スマホの代替」ではなく「常時接続の相棒」へ

生成AIの進化により、スマートグラスの価値はさらに高まっています。音声で質問し、目の前に要約や翻訳結果が表示される。会議中にメモや話者情報を確認できる。旅行先で看板やメニューの翻訳を自然に見ることができる——こうした体験は、スマートフォンよりも眼鏡型デバイスの方が自然です。

ただし、普及にはバッテリー持続時間、装着感、価格、デザイン、視認性、そして社会的受容性という複数の課題があります。Even Realitiesのようにカメラを外した設計は、その中でも特に「周囲の人に受け入れられるか」という課題に対する現実的な回答と言えます。

今回の評価額10億ドル到達は、スマートグラス市場が再び投資家の注目を集めていることを示しています。日本でも今後、AI翻訳、インバウンド観光、業務効率化、アクセシビリティ支援などの分野で、カメラなしスマートグラスの活用が広がる可能性があります。

スマートグラスは、かつての未来的なガジェットから、より実用的で控えめな日常デバイスへと変化しつつあります。Even Realitiesの資金調達は、その流れを象徴するニュースと言えるでしょう。

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