AI検索はGoogleを奪うのか?Shopifyが示した「ECではむしろ売上増」という意外な現実

生成AI検索の普及によって、ニュースメディアや出版社では検索流入の減少が懸念されています。しかし、ECプラットフォーム大手のShopifyは、少なくともオンラインストアにおいてはAI検索がGoogleを置き換えるのではなく、新たな流入と売上を生み出していると説明しています。

Shopifyによると、AIは出版社で起きているような形で検索トラフィックを奪っているわけではない。むしろ、ShopifyストアへのAI経由のトラフィックと注文は、第2四半期に前年同期比で3倍に増加した。

AI検索は「情報収集」から「購買導線」へ変わり始めている

これまで検索エンジンは、ユーザーが商品を探すための入り口でした。たとえば「おすすめのランニングシューズ」「在宅勤務向けチェア」と検索し、比較記事やレビューサイトを読み、最終的にECサイトへ移動するという流れです。

しかし、ChatGPTやPerplexity、GoogleのAI検索機能のようなサービスが広がることで、ユーザーの行動は少しずつ変化しています。単にキーワードを入力するのではなく、「身長170cmで初心者向けのランニングシューズを教えて」「1万円以下でギフトに向く日本酒を探して」といった、より具体的な相談型の検索が増えています。

Shopifyの発言が興味深いのは、AI検索が従来のGoogle検索を完全に置き換えるのではなく、EC事業者にとっては新しい販売チャネルになり得ることを示している点です。出版社にとってAI検索は、記事本文を要約されてしまい、サイト訪問が減るリスクがあります。一方でECの場合、AIが商品発見を助けたとしても、最終的な購入はストアで行われるため、流入や注文につながりやすい構造があります。

日本のEC事業者にとって重要になる「AIに見つけられる商品情報」

日本でも、Shopifyを使うD2Cブランドや小規模EC事業者は増えています。今後、AI検索からの流入が本格化すれば、従来のSEO対策だけでなく、「AIに正しく理解される商品ページ作り」が重要になります。

商品名だけでなく、用途・悩み・比較軸を明確にする

AI検索では、ユーザーが必ずしも商品名で検索するとは限りません。「敏感肌でも使える日焼け止め」「出産祝いに向く実用的なギフト」「狭い部屋でも置けるデスク」のように、用途や悩みベースで商品を探すケースが増えると考えられます。

そのため、日本のEC事業者は商品ページに、サイズ、素材、利用シーン、対象ユーザー、他商品との違い、よくある質問などを丁寧に記載する必要があります。AIが商品を推薦する際に参照しやすい情報を整えることが、将来的には検索順位以上に重要になる可能性があります。

レビューやFAQもAI時代の資産になる

AIは、商品説明だけでなく、レビューやFAQ、比較情報なども手がかりにする可能性があります。たとえば「30代女性へのプレゼントに向いているか」「初心者でも使いやすいか」といった判断には、実際の購入者の声が強力な材料になります。

日本市場では、口コミやレビューへの信頼度が高い傾向があります。AI検索が普及すれば、良質なレビューを集め、整理し、商品ページ上で分かりやすく提示することが、AI経由の購買導線を強化する施策になっていくでしょう。

Google依存からの脱却ではなく、流入経路の多様化が進む

Shopifyの見方は、「AI検索がGoogleを終わらせる」という単純な話ではありません。むしろ、Google検索、SNS、動画プラットフォーム、マーケットプレイス、そしてAI検索が並存し、ユーザーが商品に出会う経路がさらに分散していく流れと見るべきです。

日本のEC事業者にとっても、これはチャンスです。大手モール内検索や広告に依存してきた企業にとって、AI検索は新たな発見チャネルになり得ます。特に、独自性のある商品、ニッチな悩みに応える商品、ストーリー性のあるブランドは、AIによる推薦と相性が良い可能性があります。

一方で、AIに商品情報を正しく読み取ってもらえなければ、存在しないも同然になってしまうリスクもあります。今後は、SEO、SNS運用、広告運用に加えて、「AIディスカバリー最適化」とも呼べる新しい視点が求められるでしょう。

Shopifyが示した「AI経由のトラフィックと注文が3倍」というデータは、AI検索がメディア業界だけでなく、EC業界にも大きな構造変化をもたらし始めていることを示しています。日本のブランドや小売事業者にとっても、AI検索は遠い未来の話ではなく、すでに備えるべき新しい購買導線になりつつあります。