「AIを使わない方法」が満席に?米国の図書館で広がる“脱ビッグテック”ワークショップ

米TechCrunchが報じたのは、米国各地の図書館で開催されている「Avoiding AI(AIを避ける)」ワークショップが、予想を超える人気を集めているという動きです。生成AIの利用が急速に広がる一方で、個人情報、著作権、雇用、教育、そしてビッグテックへの依存に不安を抱く人々が、「AIと距離を置くための知識」を求め始めています。

元記事タイトルの日本語訳

図書館員たちが、ビッグテックにうんざりした人々のために話題の「AIを避ける」ワークショップを開催している

記事本文の重要ポイント

米国各地の図書館では、「AIを避ける」ワークショップに前例のない需要が寄せられている。

解説:なぜ「AIを学ぶ」ではなく「AIを避ける」が求められているのか

ここ数年、生成AIをめぐる情報発信の多くは「どう使いこなすか」に集中してきました。ChatGPT、画像生成AI、AI検索、業務自動化ツールなどは、仕事や学習の効率化をうたって急速に普及しています。しかしその一方で、「自分のデータがどこで使われているのか分からない」「AI生成物と人間の創作物の区別がつかない」「知らないうちにAI機能がサービスに組み込まれている」といった不安も強まっています。

米国の図書館で「Avoiding AI」ワークショップが注目される背景には、単なるテクノロジー嫌悪ではなく、利用者が自分で選択権を取り戻したいという意識があります。つまり、AIを全面否定するというよりも、「どの場面でAIを使い、どの場面では使わないのか」を判断するためのリテラシー教育として受け止めるべきでしょう。

図書館が担う“中立的なデジタル避難所”としての役割

興味深いのは、この動きの中心に図書館員がいることです。図書館は長年、情報へのアクセス、メディアリテラシー、プライバシー保護、地域コミュニティの学習支援を担ってきました。生成AIの時代においても、その役割はむしろ重要性を増しています。

商業サービスを提供する企業がAI活用を推進するのは自然な流れですが、利用者の不安や疑問に対して中立的に向き合える場所は限られています。図書館であれば、「このAIツールは便利です」と勧めるだけでなく、「使わない選択肢」「データを渡さない設定」「AI生成コンテンツの見分け方」といった実践的な知識を公共的な立場から提供できます。

日本でも広がる可能性:学校・自治体・企業研修で必要になる“AIを避ける力”

日本でも、行政、教育、企業の現場で生成AI導入が進んでいます。自治体の問い合わせ対応、学校でのレポート作成、企業の議事録や資料作成など、AIはすでに日常業務に入り込みつつあります。その一方で、個人情報の入力、機密情報の漏えい、著作権侵害、誤情報の拡散といったリスクへの理解はまだ十分とは言えません。

今後、日本でも「AI活用講座」だけでなく、「AIを使わないための講座」や「AIから個人情報を守る講座」へのニーズが高まる可能性があります。特に高齢者、学生、保護者、中小企業の担当者にとっては、AIを使いこなす前に「どのサービスがAIを使っているのか」「入力してはいけない情報は何か」「AIの回答を信じすぎないためにはどうするか」を知ることが重要です。

“反AI”ではなく“選べるAI社会”へ

今回の米国での動きは、AIに対する反発だけではなく、テクノロジーとの付き合い方が次の段階に入ったことを示しています。これまでは「AIを導入するかどうか」が議論の中心でしたが、これからは「AIが標準搭載された社会で、どうやって自分の意思で距離を取るか」が問われます。

日本の市場でも、AIを前面に押し出すサービスが増える一方で、「AI不使用」「人間による確認済み」「データを学習に使わない」といった表示が価値を持つ場面が出てくるでしょう。食品におけるオーガニック表示や、プライバシー重視の検索エンジンが支持される流れと同じように、デジタルサービスでも“AIとの距離感”がブランド価値になる可能性があります。

今後の展望:AIリテラシーは「使い方」から「拒否権」まで含む時代へ

生成AIの普及は止まらないでしょう。しかし、普及が進めば進むほど、利用者側には選択肢と説明責任が求められます。AIを便利に使う能力だけでなく、AIを避ける方法、AIにデータを渡さない設定、AI生成物を見抜く視点、そして必要に応じて人間による判断を求める権利が重要になります。

米国の図書館で「Avoiding AI」ワークショップが人気を集めているというニュースは、日本にとっても示唆的です。AI時代のデジタルリテラシーとは、単に最新ツールを使えることではありません。自分の情報、時間、創造性を誰に預けるのかを自分で決められることこそが、これからのリテラシーの核心になるはずです。