米TechCrunchは、スタートアップ、ベンチャーキャピタル、ディールメイキング関係者向けイベント「StrictlyVC」が、2026年9月10日にニューヨークへ戻ってくると報じました。2024年以来のニューヨーク開催となる今回のイベントは、同市のスタートアップコミュニティにとって大きな節目を祝う場として位置づけられています。
2024年以来初めて、StrictlyVCがニューヨーク市に戻ってくる。しかも今回は、通常なら非公開イベントで期待されるようなアクセスを、スタートアップ、VC、ディールメイキングに関わるコミュニティ全体へ届ける。
ニューヨークが「次のスタートアップ拠点」として再注目される理由
米国のスタートアップ都市といえば、長らくシリコンバレーが象徴的な存在でした。しかし近年は、ニューヨークの存在感が再び高まっています。特にフィンテック、メディア、広告、エンタープライズSaaS、ヘルスケア、AI活用型の業務支援サービスなど、既存産業とテクノロジーの接点が大きい領域では、ニューヨークの強みが際立ちます。
今回のStrictlyVC復帰が示しているのは、単なるイベント開催ではなく、「資本」「起業家」「大企業」「専門人材」が近い距離で交わる都市として、ニューヨークのスタートアップエコシステムが再評価されているという流れです。特にVCイベントは、表向きには講演やネットワーキングの場でありながら、実際には投資案件の発掘、共同投資家探し、M&Aの端緒づくりといった“非公開の商談”が生まれる場でもあります。
「アンダーラップなアクセス」を開くことのインパクト
記事で印象的なのは、「under-wraps event」、つまり通常は限られた人しか参加できない非公開性の高いイベントで得られるようなアクセスを、より広いスタートアップ・VCコミュニティに提供するという表現です。
これは、スタートアップ業界における情報格差の縮小とも捉えられます。成長企業の創業者や有力VCと直接接点を持てる機会は、資金調達や事業提携に直結する可能性があります。とりわけ、AIブーム以降は有望スタートアップへの資金集中が進んでおり、早い段階で投資家や戦略パートナーに認知されることの重要性が増しています。
日本のスタートアップ市場への示唆
日本でも近年、スタートアップ育成5か年計画や大企業によるCVC投資、大学発ベンチャー支援などを背景に、起業環境は改善しつつあります。一方で、米国と比べると「投資家、起業家、大企業の意思決定者が高密度で交わる場」はまだ限られています。
StrictlyVCのようなイベントが持つ価値は、単に著名人の登壇を聞くことではありません。むしろ、参加者同士が同じ空間に集まり、未公開のトレンドや投資テーマ、次に資金が流れ込む領域を肌感覚でつかめる点にあります。日本でも、東京だけでなく大阪、福岡、名古屋、札幌などでスタートアップ支援が進むなか、こうした“密度の高いコミュニティ形成”は今後さらに重要になるでしょう。
日本企業にとっては「海外VCネットワーク」への接続が鍵
日本のスタートアップがグローバル展開を目指す場合、海外VCや現地の事業会社との接点は不可欠です。ニューヨークで開催されるStrictlyVCのような場は、米国市場の温度感を把握するうえでも重要です。特に、金融、エンタープライズ、AI、クリエイターエコノミー、リテールテックなどの領域で事業を展開する日本企業にとって、ニューヨークのネットワークはシリコンバレーとは異なる価値を持ちます。
今後、日本発スタートアップが米国市場に進出する際には、サンフランシスコやシリコンバレー一辺倒ではなく、ニューヨークを起点にした資金調達や事業提携も有力な選択肢になっていくはずです。
2026年のスタートアップ投資は「選別」と「都市間競争」が焦点に
今回の記事は短い告知ではありますが、その背景には、2026年のスタートアップ市場を読み解くうえで重要なテーマが見えます。それは、投資家の目がより厳しくなる一方で、有望な都市や領域には資金と人材が集中するという流れです。
AI関連企業への投資熱は続くとみられますが、単に「AIを使っている」だけでは評価されにくくなっています。実際の収益性、顧客獲得力、データの優位性、業界特化の深さが問われる時代に入っています。その意味で、金融、法律、医療、メディア、広告など多様な産業が集積するニューヨークは、AIスタートアップが実需と結びつきやすい都市でもあります。
StrictlyVCのニューヨーク復帰は、こうした都市型スタートアップエコシステムの強さを改めて示す動きです。日本の起業家や投資家にとっても、米国のスタートアップトレンドを追う際には、シリコンバレーだけでなくニューヨークの動向を注視する価値が高まっています。
