米TechCrunchは、Webホスティング事業者DreamHostに対し、ハッカーが脆弱性を悪用して顧客のメールやファイルへアクセスしていたと報じました。攻撃は「数カ月に及ぶ」ものとされ、レンタルサーバーやメールホスティングを利用する企業・個人にとって、見過ごせないセキュリティ事案です。
「ハッカーが数カ月にわたる攻撃で、DreamHost顧客のファイルと受信箱を盗んだ」
「同Webホスティング企業によると、ハッカーは脆弱性を悪用し、『意図的な攻撃』の中で顧客のメールとファイルにアクセスした。」
ホスティング事業者への侵害は、利用者側の被害が見えにくい
今回の報道で重要なのは、攻撃対象が個々のWebサイト運営者ではなく、ホスティング事業者そのものだった点です。レンタルサーバーやメールホスティングは、企業サイト、ECサイト、問い合わせフォーム、業務メールなどの基盤として使われています。そのため、事業者側の環境に侵害が起きると、利用者が直接攻撃を受けていなくても、メール本文、添付ファイル、Webサイトのデータ、設定ファイルなどに影響が及ぶ可能性があります。
日本でも中小企業や個人事業主は、コストや運用負荷の面から共有ホスティングを利用するケースが多くあります。特にメールボックスには、取引先とのやり取り、請求書、顧客情報、認証コードの通知など、機密性の高い情報が蓄積されがちです。クラウドストレージやSaaSのセキュリティ対策には注目が集まる一方で、昔から使っているレンタルサーバーやメールサーバーのリスクは軽視されやすいのが実情です。
「メール流出」はフィッシング被害の起点になりやすい
メールの受信箱が第三者に閲覧された場合、単なる情報漏えいにとどまりません。攻撃者は過去のメールの文脈を把握し、取引先になりすました精巧なフィッシングメールを作成できます。たとえば、実在する請求書の件名や署名、過去のやり取りを引用したメールで送金先変更を依頼すれば、通常の迷惑メールよりもはるかに見抜きにくくなります。
また、Webサイトのファイルにアクセスされた場合、改ざんやマルウェア設置、認証情報の窃取につながる恐れもあります。WordPressなどのCMSを使っている場合、設定ファイルにデータベース接続情報が含まれていることもあり、被害範囲がWebサーバーの外へ広がる可能性もあります。
日本の利用者が今すぐ確認すべきポイント
同様の事案に備えるうえで、日本のWeb担当者や経営者が確認すべき点は明確です。まず、ホスティングやメールサービスで使っている管理画面のパスワードを再設定し、多要素認証が利用できる場合は必ず有効化すること。次に、メール転送設定や不審な管理者アカウントが追加されていないかを確認することが重要です。
さらに、Webサイトのファイル更新履歴、CMSのプラグイン、未知のPHPファイル、外部への不審な通信なども点検すべきです。バックアップについても、サーバー内だけでなく、外部の安全な場所に世代管理して保存しておく必要があります。攻撃が「数カ月」に及ぶ場合、直近のバックアップだけでは侵害後の状態を保存している可能性があるためです。
クラウド時代でも「サーバーを借りるリスク」は消えていない
近年はAWS、Google Cloud、Microsoft Azureのような大手クラウドや、国内のマネージドホスティング、SaaS型CMSへ移行する企業が増えています。しかし、コストや既存システムの都合から、共有ホスティングや従来型メールサーバーを使い続ける企業も少なくありません。
今回のDreamHostの件は、ホスティング事業者の規模にかかわらず、利用者側にも「委託先リスク」を前提とした運用が必要であることを示しています。サービス提供者を信頼するだけでなく、ログの確認、権限管理、バックアップ、インシデント発生時の連絡体制を整えておくことが、今後ますます重要になります。
Webサイトやメールは、企業にとって最も基本的なデジタル資産です。だからこそ、普段は意識されにくいホスティング環境の安全性を、改めて点検するタイミングだと言えるでしょう。
引用元: Hackers stole DreamHost customer files and inboxes during months-long attack
