米TechCrunchが報じたクリーンテック系スタートアップ「Fluxnium」は、海水中に溶け込んでいるウランを直接回収する繊維技術に取り組んでいます。もし実用化が進めば、原子力発電の燃料調達をめぐる常識を大きく変える可能性があります。
クリーンテック・スタートアップのFluxniumは、5万年分に相当する核燃料を利用する方法を見つけた。
Fluxniumの繊維は、海水から直接ウランを抽出できる。この海水中のウランは、数千世代にわたって原子力発電を支えられるほどの量がある。
海水ウラン回収が注目される理由
ウランと聞くと、鉱山から採掘する資源というイメージが強いですが、実は海水中にもごく微量のウランが溶け込んでいます。濃度は低いものの、地球全体の海水量が膨大であるため、総量としては非常に大きいとされています。
Fluxniumが注目されるポイントは、この「薄く広く存在する資源」を繊維によって効率的に回収しようとしている点です。従来のウラン採掘は、鉱山開発、精錬、輸送、地政学リスクなど多くの課題を抱えています。一方、海水からの回収が商業的に成立すれば、燃料供給の安定性は大きく高まる可能性があります。
日本にとっては「資源安全保障」の文脈で重要
日本はエネルギー資源の多くを海外に依存しており、原子力燃料についても例外ではありません。ウランの調達先は限られており、国際情勢や輸送リスクの影響を受けます。そのため、海に囲まれた日本にとって、海水ウラン回収技術は単なる研究テーマではなく、長期的なエネルギー安全保障に関わる技術になり得ます。
特に近年は、生成AIやデータセンターの拡大によって電力需要が世界的に増加しています。再生可能エネルギーだけで安定供給を実現するには蓄電池や送電網の強化が不可欠であり、原子力を脱炭素電源の一部として再評価する動きもあります。そうした中で、燃料調達の持続性を高める技術は、原子力の将来像を左右する重要な要素になります。
課題はコストとスケール、そして社会的受容
ただし、海水からウランを取り出せることと、それを経済的に大量生産できることは別問題です。海水中のウラン濃度は非常に低いため、回収材料の性能、耐久性、設置・回収コスト、環境への影響評価などをクリアしなければなりません。
また、日本では原子力技術に対する社会的な視線も厳しく、燃料供給が安定するだけで原子力への支持が広がるわけではありません。安全性、廃棄物処理、発電所の運用体制といった論点とセットで議論される必要があります。
「燃料が尽きない原子力」は脱炭素の切り札になるか
Fluxniumのような企業が取り組む海水ウラン回収は、原子力をより長期的な脱炭素電源として位置づけるうえで重要な技術です。もし海水中のウランを低コストかつ低環境負荷で回収できるようになれば、原子力は「限られた地下資源に依存する発電」から、「海に広く存在する資源を活用する発電」へとイメージを変える可能性があります。
日本にとっても、この分野は注視すべき領域です。エネルギー安全保障、脱炭素、産業競争力のすべてに関わるからです。今後、Fluxniumの技術が実験段階から商業化へ進むのか、そしてコスト面で既存のウラン調達と競争できるのかが、大きな焦点になるでしょう。
引用元: Clean tech startup Fluxnium found a way to tap 50,000 years’ worth of nuclear fuel
