米TechCrunchによると、トランプ政権が公開していたアーケード風ゲーム「Build the Wall」が、テトリスの権利を管理するThe Tetris Companyの反応を受け、短期間で姿を消したと報じられています。政治的メッセージをゲーム化する試みは珍しくありませんが、今回は有名ゲームIPとの類似性が問題視された可能性があります。
「ホワイトハウス、The Tetris Companyの苦情を受けて『Build the Wall』ゲームを取り下げ」
トランプ政権の短命に終わったアーケードゲーム「Build the Wall」は、The Tetris Companyが「著作権侵害を非常に深刻に受け止めている」と投稿した後、現在どこにも見当たらなくなっている。
政治キャンペーンとゲーム表現の距離が急速に縮まっている
今回のニュースで注目すべきなのは、単に「ゲームが削除された」という点だけではありません。政治的なスローガンや政策メッセージを、SNSで拡散しやすいミニゲームやインタラクティブコンテンツに落とし込む流れが、海外ではますます一般化していることです。
「Build the Wall」という名称からも分かる通り、このゲームはトランプ氏の移民政策を象徴するフレーズを想起させます。政治的主張を文章や動画ではなく、ユーザーが操作できるゲームとして提示することで、支持者の参加感を高めたり、話題化を狙ったりする効果があります。
一方で、ゲームはルール、画面構成、操作感、ブロックの形状、落下や積み上げの表現など、既存作品との類似が問題になりやすいメディアでもあります。特に「テトリス」は世界的に知られたゲームであり、見た目や仕組みが連想されるだけでも、権利者が敏感に反応するのは自然です。
日本企業・自治体にも無関係ではない「パロディ」と著作権の境界線
日本でも、企業のプロモーション、自治体の観光PR、選挙関連の啓発コンテンツなどで、レトロゲーム風の演出が使われるケースは増えています。ドット絵、落ち物パズル、横スクロールアクション、RPG風UIなどは、ノスタルジーを刺激しやすく、SNSでも拡散されやすい表現です。
しかし、ここで注意すべきなのは「レトロ風」や「オマージュ」のつもりでも、特定の有名タイトルを強く想起させる場合、権利侵害を指摘されるリスクがあるという点です。ゲームのアイデアそのものは保護されにくい一方で、画面デザイン、キャラクター、音楽、名称、演出の組み合わせが既存作品に近ければ、商標権や著作権、不正競争防止法上の問題に発展する可能性があります。
特にリスクが高いのは「誰が見ても元ネタが分かる」ケース
日本のマーケティング現場では、「あえて分かる人には分かる」パロディ表現が好まれることがあります。しかし、元ネタが有名であればあるほど、権利者側の監視も強くなります。今回のようにテトリス級の世界的IPであれば、政治的文脈で使われること自体がブランドイメージの問題にもなり得ます。
特に公的機関や大企業が関わるキャンペーンでは、「話題になればよい」という発想だけでは不十分です。公開後に削除されれば、広報上の失敗として報じられ、結果的に本来伝えたかったメッセージよりも、権利処理の甘さが注目されてしまいます。
今後は「ゲーム風コンテンツ」にも法務チェックが必須になる
生成AIやノーコードツールの普及により、短期間でミニゲームやインタラクティブコンテンツを制作するハードルは大きく下がっています。今後、政治キャンペーン、ブランド広告、採用広報、教育コンテンツなどで「ゲーム化」はさらに進むでしょう。
その一方で、制作スピードが上がるほど、著作権や商標権の確認が後回しになりやすくなります。特に海外展開を視野に入れる場合、日本国内では見過ごされがちな表現でも、海外の権利者から即座に申し立てを受ける可能性があります。
今回の「Build the Wall」騒動は、ゲーム表現が政治・広告・広報の領域に入り込む時代において、クリエイティブと法務の連携がますます重要になることを示しています。面白さや拡散力を追求するだけでなく、「その表現は誰かのIPに依存していないか」を事前に確認する姿勢が、これからのデジタル施策には欠かせません。
日本の企業や行政にとっても、これは対岸の火事ではありません。ゲーム文化を活用したプロモーションが増えるほど、権利処理の精度がブランド信頼を左右する時代になっていくでしょう。
引用元: White House takes down ‘Build the Wall’ game after the Tetris Company complains
