採用はLinkedInだけじゃない?Lightspeedが「Instagram DM」で人材を見つけた理由

米VC大手Lightspeedが、最新の採用やブランド発信においてソーシャルメディアをどのように活用しているのかが話題になっています。TechCrunchの記事では、LightspeedのJosh Machiz氏とClaire Zau氏が、同社のソーシャルメディア戦略やポッドキャスト「Lightwork」について語ったことが紹介されています。

「LightspeedのパートナーであるJosh Machiz氏とClaire Zau氏が、Equityのスタジオを訪れ、拡大するソーシャルメディアでの存在感と、同社のポッドキャスト『Lightwork』の背後にある戦略について語った。」

VCの採用・発信は「公式サイト」から「SNSの会話」へ

記事タイトルにある「Instagram DM経由で新たな人材を見つけた」という点は、いまのスタートアップ業界やVC業界の変化を象徴しています。従来、投資会社やテック企業の採用といえば、LinkedIn、採用ページ、紹介ネットワークが中心でした。しかし、若い起業家やクリエイター、AI人材、プロダクト人材の多くは、Instagram、X、TikTok、YouTube、Substackなどで日常的に発信しています。

つまり、優秀な人材の「履歴書」は、もはやPDFや職務経歴書だけではありません。投稿内容、コメントでの議論、コミュニティ内での影響力、ポッドキャストや動画での発言そのものが、その人のスキルや思考を示すポートフォリオになっています。

日本企業にも広がる「SNS採用」の可能性

日本でも、エンジニア採用ではGitHubやQiita、Zenn、Xでの発信が評価されるケースが増えています。デザイナーであればInstagramやBehance、マーケターであればnoteやXの運用実績が、そのまま実力の証明になることもあります。

Lightspeedの事例が示すのは、単に「Instagramで採用できる」という話ではありません。企業側が日頃からSNS上で魅力的な発信を行い、候補者と自然な接点を作っておくことが、採用競争力そのものになるということです。特にスタートアップやVCのように、ブランドの信頼感やスピード感が重要な業界では、SNS上での存在感がそのまま人材獲得力につながります。

ポッドキャスト「Lightwork」が示す、VCの新しいブランディング

TechCrunchの記事では、Lightspeedのポッドキャスト「Lightwork」についても触れられています。VCにとってポッドキャストは、単なる広報チャネルではありません。投資家の思想、注目領域、起業家との関係性、業界を見る視点を継続的に伝えるためのメディアです。

「彼らは、成長を続けるソーシャルメディアでの存在感と、ポッドキャスト『Lightwork』の戦略について語った。」

近年、海外のVCはメディア企業化を進めています。Andreessen Horowitz(a16z)を筆頭に、ブログ、ニュースレター、YouTube、ポッドキャストを通じて、投資先だけでなく業界全体に影響を与える発信を行っています。Lightspeedの取り組みも、その流れの中に位置づけられます。

「投資家の顔が見える」ことが起業家の安心材料になる

起業家にとって、どのVCから資金調達するかは極めて重要です。資金だけでなく、事業支援、採用支援、次回ラウンドの紹介、グローバル展開のサポートなど、投資家との相性が会社の成長に影響するからです。

そのため、ポッドキャストやSNSを通じて投資家の考え方を事前に知ることができれば、起業家にとっては大きな判断材料になります。逆にVC側にとっても、発信を通じて自社の価値観に合う起業家や人材と出会いやすくなるメリットがあります。

日本のVC・スタートアップが学べること

日本のVCやスタートアップも、採用や投資先開拓において「待ち」の姿勢から脱却する必要があります。求人票を出す、イベントに登壇する、紹介を待つだけでは、優秀な人材や起業家との接点は限られます。

特にAI、半導体、気候テック、クリエイターエコノミー、フィンテックなどの領域では、専門性の高い人材が複数のコミュニティに分散しています。そうした人材と出会うには、企業や投資家自身がSNS上で継続的に発信し、議論に参加し、信頼を積み上げることが不可欠です。

今後は「採用広報」と「コンテンツ戦略」が一体化する

今後、日本でも採用広報、PR、SNS運用、オウンドメディア、ポッドキャストがより密接に結びついていくでしょう。企業文化を伝える投稿、経営陣の考えを語る音声コンテンツ、社員のリアルな働き方を見せる動画などが、候補者との接点になります。

LightspeedのInstagram DM採用のような事例は、一見すると偶然の成功に見えます。しかし、その背景には、SNSでの継続的な発信、ブランド設計、候補者との自然な関係構築があります。日本企業にとっても重要なのは、単に流行のSNSを使うことではなく、「誰に、どんな価値観を、どのような形で伝え続けるか」を明確にすることです。

採用市場がますます競争的になる中で、企業の魅力は求人票だけでは伝わりません。これからの採用力は、SNS上での会話力、発信力、そしてコミュニティとの距離感によって大きく左右される時代に入っています。